演技をしていてどうしても棒読みになってしまう、会話にならない、などと困っていませんか?講師に「もっと感情をこめて!」なんて言われてもどうしたらいいのかわからず同じことを繰り返したり…
芝居にリアリティをもたせるためには考えなければいけないコツがあります。
本日は芝居にリアリティをもたせるアプローチ方法と思考方法について書いていきたいと思います。
なぜ棒読みになってしまうのか
そもそも棒読みとは何でしょうか?棒のようにまっすぐ喋ること?
語源には色々な説がありますが、皆さんは「波形」というものをご存知でしょうか。
(↑波形イメージ図)
最近ではスマホのボイスメモなんかでも表示されますよね。
無音の時は線になって、大声を出すと線が大きく振れる波形のことです。
棒読みとは棒のように音が変わらないこと。
これは小さな音だけでなく、大声を出し続けても「太い棒」になるだけです。
これも棒読みだと言えそうですね。
要するに棒読みとは変化がなく、抑揚や緩急・間というものがなくずっと同じ調子で読むことです。
今の話でピンときた人もいるのではないでしょうか。
そうです。棒読みにならないためには「大小」「抑揚」「緩急」「間」という要素を変化させる必要があります。
セリフの大小・抑揚・緩急・間を考えると棒読みになりにくい
感情と音の関係
さて、棒読みを防ぐ要素はわかりました。
しかしそれだけでリアルな芝居が出来るわけではありません。
そこに感情を乗せる(乗せたように聞こえる)必要があります。
このキャラクターが怒っている時に「私は怒ってます」なんてセリフをわざわざ言ったりしません。
キャラクターの表情や息遣い、セリフの調子で観客(視聴者)は感情をくみとります。
「そういえば昨日駅でみかけたけど何処に行ってたの?」
こんなセリフがあったとします。いくつかのシチュエーションを出しますのでどういう風に言うか考えてみましょう。
1、友人が男子(女子)といい雰囲気で駅にいたのをみつけた
2、彼氏(彼女)がデートをキャンセルしたけど偶然駅でみかけてしまった
3、友人が買い物袋を抱えて楽しそうに駅を歩いていたのをみかけた
さて、上の3つの状況でセリフを言うとしたらどういう風に言うでしょうか?考えてみましょう。そしてもし可能ならボイスメモなどで実際にセリフを録音してみましょう。
どうでしょうか?録音できましたか?
もちろんセリフの言い方は正解がひとつだけ、なんてことはありません。しかし3つとも全く同じ言い方にはならないはずです。参考までに以下のような調子でセリフを言ってみてはいかがでしょうか?
1、「白状しなさいよ~」なんて雰囲気で冷やかすように。
「そういえば~、昨日駅でみかけたけど何処に行ってたの~?」
2、何でデートを断ったのか、嘘をついたのか、浮気しているのか、など怒りと疑心暗鬼
「そういえば…昨日、駅でみかけたけど……何処に行ってたの?」
3、楽しそうだったのは何だったのか、何を買っていたのか、という雑談
「そういえば昨日駅でみかけたけど、何処に行ってたの?」
あくまで参考ではありますが、同じセリフでもこのように言い方が変わるのではないでしょうか?
さきほど録音したものと聞き比べてみてください。
音声だけで状況のニュアンスが表現できているでしょうか。
もちろん「私だったらこんな聞き方をします」というものがあれば取り入れてみてください。
その変化が先ほど挙げた「大小」「抑揚」「緩急」「間」などに影響してきます。
「ここはこんな気持ちで聞きにくいことだから言葉に詰まるよな」
「ここに間をあけるとキャラが動揺しているように聞こえるな」
鶏が先か卵が先か、と言った具合に【感情から音の変化にアプローチする】のか【音の変化から感情へアプローチする】のかは自由です。
個人的には感情からのアプローチが良いと思いますが、まずはやりやすい方で変化をつけてみましょう
聞いている人が状況を理解できるように喋ってみよう
キャラクターの役作り
レッスンで「役作り」という言葉を聞いたことがある人もいると思います。
役を作る。一体どういうことをすればいいのでしょうか?
先ほど考えてみたセリフを例にもう一度考えてみましょう。
「そういえば昨日駅でみかけたけど何処に行ってたの?」
先ほどは状況をメインに考えてみたのですが、今度はそれを「誰が言っているのか?」という部分に焦点をあてて考えたいと思います。
A.明朗快活で人気者タイプの人
B.大人しく喋りかけるのが苦手な人
C.言動が荒っぽく不良っぽい人
さて、3つのタイプを挙げてみました。キャラクターが以上のような性格だったとして、先ほどの1,2,3の状況を演じてみたらどうなるでしょうか?A1,A2,A3,B1…と9通り出来ると思います。
A1 人気者タイプの人が相手の恋愛事情を聞きだそうと冷やかす
B2 嘘を追及しようとするが喋るのが苦手で聞き出せない
C2 すぐにでも問い詰めたいがぐっと我慢しているがイライラしている
などなど、先ほどの状況だけではなくキャラクターの性格が加わったことによってバリエーションが広がると思います。
ただ単に書いていることを読むのではなく、どのような状況でどのようなキャラクターがそれを喋っているのか考えるだけでセリフの言い方が具体的になります。
セリフはシチュエーション×キャラクターでイメージが広がる
台本を大局的にとらえる
さて、役者は自分のセリフだけをチェックするというわけではありません。
台本全体をチェックしています。
自分のセリフの状況とキャラクターは確認できました。
そこから台本全体に視野を広げて考えてみることにしましょう。
まず今アナタがやろうとしている作品はどのような作品でしょうか?
コメディ?サスペンス?人間ドラマ?ホラー?
色々なジャンルの作品がありますよね。
その作品のカラーを理解せずに芝居をすると作風に合わない芝居をして浮いてしまうことがあります(意図的に合わないキャラを登場させることもあります)。
演技という根本は変わらないのですが、それをどのように表現するのかという表現方法は変わってくるのです。
ジャンルだけでなく、舞台や映像の芝居でも変わってきます。
悲しいという表現をする時に映像だと眉間にしわが寄って涙を一筋流す表現になるかもしれませんが、舞台上でそれをやっても遠くの観客には伝わらないですし、ましてや声優に至っては音声にならないことには全く伝わることはありません。
作品全体をつかめたら、あなたの出演するシーンに焦点をあててみましょう。
そのシーンはどんなシーンでしょうか?
キャラクターがどのような人なのかを見せる自己紹介的なシーン、事件が起きて緊張感が増すシーン、追い詰められて窮地に立たされるシーン、問題が解決に向かうシーン…
そのシーンにおいて自分のセリフはどんな役割があるのでしょうか?
意味のないセリフはありません。必ずそのセリフには目的があります。
「おはよう」の言い方1つでも、朝であること、このクラスメイトと仲がいいこと、体調や心情…様々な情報をくみ取ることができます。
「そういえば昨日駅でみかけたけど何処に行ってたの?」
・憧れのあの子とデートできた回想を話すきっかけ
・浮気と勘違いされてドギマギするきっかけ
・事件のアリバイを追及するセリフ…etc.
そのシーン、そしてそのシーンにおいてそのセリフの役割を理解するだけでどのように言えば良いのか具体的にイメージできるようになります。
まとめ
さて、芝居にリアリティをもたせるというテーマでアプローチ方法や思考方法のご紹介をしましたがいかがでしたか?
役作りというのはこれが全てではありません。
色々なアプローチ方法がありますので今回はほんの一端でしかありません。
しかし、これが皆さんの演技の助けになればと思っています。
また、何か疑問などがあればコメントやツイッターなどにお寄せください。
それでは本日のレッスンはここまでです!